(こちらは2018年1月に書いた記事です)
今回も視聴率的には結果を出したと言える年末恒例の「ガキ使い笑ってはいけないシリーズ」。例年と違うのは浜田の黒塗りメイクとベッキーへのタイキックが問題視されているということだ。
僕は6時間の放送全て見たが、ベッキーのことは書いてなかったので今日は書く。
ベッキーのタイキックはどうだったか
僕は率直な感想としてはベッキーのタイキックはそれほど笑えなかった。しかしそれは今回一部で叩かれている「女性が抑え込まれて暴力を振られ、それを見た周りの男性が笑っている」という状況が笑えなかったからじゃない。
単に、ベッキー出演のタイミングが旬を逃した感じだったのでそれほど笑えなかったというだけだ。ベッキーが登場した時、「不倫で謹慎していたベッキーがここで復帰!とかならめちゃくちゃ面白かっただろうな、もったいないな」と頭によぎったので笑いが半減した。
ただ全く笑えなかったわけではない。逆ドッキリの流れが面白かったし、タイキックってやっぱりヤバいんだなというのが分かったので面白かった。
ベッキーにタイキックが問題視されている
数日前にyahooニュースでこんな記事があった。
上に書いた通り、僕はそれほど面白いと感じなかった仕掛けなのでそんなに記憶に残っていないのだが、覚えている範囲でもこの記事に書いてあることで間違っている箇所がある。
まず、ベッキーがタイキックを受けた瞬間の箇所。
驚き、恐怖に目を見開いて、その場を逃げようとするベッキーだったが、ダウンタウンの浜田らが「動いたら危ない」と抑え込み、半ば無理強いというかたちで、タイ式キックボクサーの女性の強烈な回し蹴りを腰に受けることに
ご丁寧に太字で書いてあるけれど、僕の印象とは全く違うし、事実も違うと思う。
浜田らは「動いたら危ない」と言ったのは事実だが、抑え込んでいない。結局ベッキーは観念して自ら蹴られる姿勢をとった。記事の画像でも抑え込んでいる人間はいない。
もちろん蹴られたことを問題視しているのはわかるけど、「押さえ込み」という表現はミスリードだ。
続いて、女性への暴力の問題視。
女性への暴力を男性達がゲラゲラ笑うという本企画の構図自体が、醜悪であるし、不謹慎極まりない。
こう書かれていれば確かに僕も悪の所業だな思う。ただ、これが女性と男性、逆転していたらどうだろうか。「男性への暴力を女性達がゲラゲラ笑う」これだったらどうか。うーん。人によってはただのご褒美ではなかろうか。そういう話じゃないか。
この記事では暴力を笑いにすることを問題視しているが、例えば田中はこのタイキックを今回だけでも4発くらい受けている。ベッキー1に対し田中は4。そして田中は毎年だ。
ベッキーはこれだけ問題視しされているのにも関わらず田中へのタイキックは問題視されなかった。田中の立場よ。これでは田中が可哀想すぎる。全く釣り合わない。男女の差だろうか。弱いものの方が強いという構図になっている。
なにより、暴力でいうと浜田だ。暴力による笑いの生みの親のような存在である。暴力で笑いをとってはいけないとなると、ダウンタウンの笑いの歴史が否定される。どつき漫才は成立しなくなる。
「笑ってはいけないシリーズ」では、ベッキーへのタイキックが霞むくらいの、暴力が笑いに転換されている仕掛けが沢山あるわけだけど、やはりそれらも問題ということになってしまうのだろうか。
不謹慎や醜悪のすぐ隣にあるのが笑いである。
「笑い」にできることは何か
こういう暴力の笑いがいじめを助長してしまうということはあると思う。けれども、人間はいじめをする生き物だ。いじめは無くならない。動物の世界ですらいじめがあるくらいだ。
人間は他人との違いだったり特徴を笑ってしまう生き物だと思う。ブサイクを笑うしハゲを笑うしデブを笑う。人間とは卑しい生き物なのだ。
笑いとは緊張と緩和であり意外性だ。デブなのに動けるとかブスなのに美人気取りとか、〇〇なのに〜〜というようにギャップを作り出すことで人は笑う。
だから人との違いは笑いにとっては有利で、デブやハゲやブスなどは一つの力をすでに持っているということなのだ。笑いを取るにはこの力を使わない手はないし、そのコンプレックスを変えるために笑いを始める人も大勢いる。ブサイクでバカで虐げられてきたから笑いで見返してやる、というふうに。
だから、コンプレックスをいじりに変えて笑いにできるような人たちがテレビで人をいじって笑いにする分には僕はいいと思う。うまくいじることでいじられた人が助かるということもある。コンプレックスを笑いに変える行為、いじりは社会的包摂なのだ。
ただ、バランスが難しいという話である。やられて嫌な人もいるし、見るのも嫌だという人もいる。こと差別や暴力の問題は「嫌なら見るな」というわけにもいかない。だからテレビは配慮して過激なことができなくなり、つまらない番組が増える。
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