人間ドラマとコメディ要素の高低差『ハード・コア』山下敦弘監督・山田孝之主演

映画

山田孝之主演、山下敦弘監督の『ハード・コア』という映画を見ました。

なんの事前情報もなく見てみたら、めちゃくちゃ面白い映画でした。ここ最近で一番面白かったかも。

『ハード・コア』山下敦弘監督

『ハード・コア』は『リンダ・リンダ・リンダ』、『苦役列車』などを撮っている山下敦弘監督の映画です。

ぼくは最近のでは2016年の『オーバー・フェンス』を見ていました。

見る映画を監督で選んでいるわけではないんですが、山下監督の映画は意外と見ていました。あらすじや雰囲気に惹かれるところがあるんですよね。

自分の正義を貫いて生きるが故に不器用で社会と折り合いをつけられない男、権藤右近は活動家の埋蔵金探しを手伝い生計を立てている。
権藤と権藤の唯一の友人、牛山は、ある日廃工場でロボットを見つける。このロボットがあまりに高性能で埋蔵金を見つけてしまうが、、

映画『ハード・コア』11/23公開 予告編

『ハード・コア』は実は漫画原作の映画のようです。

原作は『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』という2017年のわりと最近の漫画で、「現代の奇書」と表されていました。

人間ドラマとコメディ要素の高低差

あらすじを書いて紹介しておいてなんなんですが、この映画はなんの前情報もなく見た方が面白いんじゃないかなと思います。

というのも、ぼくはどんな映画なのか知らずに見たんですよね。

なぜかハードディスクに録画しておいてあって、タイトルで分かりやすそうな内容な気がしたのでとりあえず消化しておくか、ってテンションで見たんです。

という感じでどんな映画か把握せずに見始めると、結構重めな人間ドラマだなって印象だったんですよ。誠実に生きているけど不器用でズレてしまっていて社会でうまく生きられない男の話。

そもそもがハード・コアってタイトルだし、いきなり暴力から始まるところや山田孝之のやさぐれ感から、アウトロー男が社会でもがくハードな社会派暴力映画だろうなと。

そしたらいきなりロボットが出てくるんですよ。コントな見た目、しかしオーバーテクノロジーの。そこから見え方がガラッと変わって、一転してコメディとして見えてくるんですね。

まあ、その前にも笑い要素はあったんですけど、あのロボがいかにもなロボなんで、ちょっと困惑した時間がありました。

でも、最初に感じた「社会で誠実に生きる難しさ」ってテーマは逸れることなく、コメディ要素が足された感じで、映画自体は全然ブレていないんですよね。

リアルから突然のファンタジーに驚くけど、テーマは貫き通している

登場人物はリアリティがすごくて「こんな人いるなあorいそうだなあ」って感じなんです。

その上で物凄い異形感のあるロボがいるってバランスなので、独特な空気感で、コメディなんだけど社会のリアルなヒリヒリした感じは保って物語が進んでいきます。

この人間ドラマとコメディ要素の高低差というか、ギャップがすごく良かったです。コメディすぎなかったことで、人間ドラマの部分がめちゃくちゃ伝わってきました。

言うなれば『シン・ゴジラ』みたいな感じですかね。

あれはゴジラという現実にはあり得ないものを一つだけ登場させて、そんなものが現れたら現代社会は一体どう立ち向かうのか、を見せたから面白かった。ゴジラに対抗するスーパーXみたいな非現実な破壊兵器は出さず、非現実をゴジラの存在のみにしたからこそ、リアルに伝わってきて面白かったんです。

『ハード・コア』もそれと同じで、非現実をロボットだけにしたことで、人間社会のリアルさを損なうことなく伝えつつ、笑いもとる良いバランスになっていたと思います。

リアルと言っても社会活動家のもとで働く人間模様なので、実際どうなのかはわからないけど、「こんな感じだんだろうな」って納得できるリアリティがありました。

どの役者も演技がむちゃくちゃ良いから、より伝わってきた

社会での生き辛さ

ぼくは主人公の右近にめちゃくちゃ共感したんですよね。右近は自分の正義を貫くが故に社会に居場所がない人間です。

誠実に生きようとして頑なに生きてきた結果、社会とずれていってしまったんですね。

具体的にどんな感じかと言うと、最初のエピソードがわかりやすいです。

バーに行き、酒を飲む右近。テレビからはハロウィンで溢れかえる若者のニュースが流れている。

はしゃぐ若者を馬鹿みたいだと思う右近。カウンターには女性が一人。その女性もテレビを見「馬鹿みたい」と右近に話しかけるように言う。

突然バーのドアが開き、ハロウィンでハメを外していたバーの常連の若者4人が入ってくる。カラオケを始め、静かだったバーの雰囲気が壊れる。

若者の一人が女性に一緒に歌わないかと誘う。すると女性は誘いに乗って歌い出す。

それに驚く右近。だんだんと不満が溜まり、右近は若者をぶん殴ってしまう。

これが『ハード・コア』の最初のシーンです。

馬鹿騒ぎする若者が嫌いな自分と同じ意見だった女性(これ松たか子なんですよね、ちょい役で大物出演)はあっさりと場の空気に合わせて行動します。

その一方で右近は自分の考えは変わらない、自分に正直にいる。不満が暴力まで行ってしまうシーンでした。

これ、なんかすごくわかるなあって思うんですね。女性みたいに、さっき言った自分の意見をすんなり曲げて、多数に合わせられれば楽なのにって思います。

でも、右近は自分の思ったことと、それを人に伝えた手前、自分の行動を変えられないんですね。だから不満がたまる。

それは誠実とも言えるけど、社会では浮いてしまうし、自分の考えに縛られすぎとも言える。こんなことってウジウジ考えない方が良いですよね。

ぼくは考えてしまうタイプです。右近のように真は通ってないんですけど、自分の発言に一貫性を持たせたいため、場にうまく合わせられないなんてことがあったりします。

右近はうじうじ考えません。解決策は暴力。ぼくはいかれた主人公だなと思う反面、そこにちょっとした爽快さを感じてしまいました。

「俺はちゃんと生きたいんだよ」って右近は言います。その気持ちにめちゃくちゃ共感しました。

まあ右近もぼくも他人の気持ちを考慮してないことが多すぎるんだろうな

おわり

不器用に生きる右近がロボを手に入れたところで不器用さは変わりません。ただ、仲間が増えたってだけ。でも、だからこそリアリティがあって面白い。

不器用で自分に正直で社会に馴染めない右近が最後には一体どうなるのか、ラストは最高です。興味があったらぜひ見てみてください。

とあるシーンでは『キッズ・リターン』のラストの「まだ始まっちゃいねえよ」並のグッとくる名台詞も出てきます。超絶オススメ!

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