『チャイルド★プラネット』という漫画を読みました。
連載期間は1996〜1997年と20年以上前の古い漫画なのですが、現代と通じるところも多々あって、面白い漫画でした。
チャイルド★プラネット
『チャイルド★プラネット』は原案・竹熊健太郎、作画・永福一成のパンデミック漫画です。
いやー面白い設定です。「大人たちだけが感染するウイルス」っていうのがこの漫画の発明だと思います。
そんなことが起こったら世界は一体どうなってしまうのか?子供だけで隔離された街には一体何が起こるのか?人類を滅ぼしかねないウイルスを拡散させないために日本政府は、米軍はどう動くのか?
よくある、世界の終末ものではなく、一つの都市だけが、子供だけがってところがポイントです。横浦市以外は普通に平和な世界なんですよね。
『チャイルド★プラネット』は全7巻で一気に描き上げられています。
無駄な引き伸ばしなく、簡潔にまとまってる!
ネットで1巻無料!!
これがなんと1巻無料でネットで読めるんです!
原案の竹熊健太郎さんが運営している電脳マヴォという無料コミックマガジンで読めるんです↓
1巻全8話が無料公開されています。あらすじで興味を持たれた方はとりあえず読んでみて!
ドラマにパクられた原案
『チャイルド★プラネット』は原案をドラマにパクられた経緯があります。
『ぼくらの勇気 未満都市』という1997年のドラマです。日テレの「土曜グランド劇場」の枠でやっていたやつです。
ぼくは世代なのでとっても懐かしいドラマ枠で。「投稿!特ホウ王国」「特命リサーチ200X」の後のドラマ枠ですね。この3番組はよく見てました。
ドラマは確か『家なき子』とか『銀狼怪奇ファイル』とかやっていた枠なんですよね。『ぼくらの勇気 未満都市』は見ていなかったけど、放送されていた記憶はあります。
このドラマの続編『ぼくらの勇気 未満都市2017』が2017年に放送されました。物語の20年後を描いた作品で、当時話題になりましたね。
このとき、原案の竹熊健太郎さんがツイッターで当時の裏話を暴露していて、『ぼくらの勇気 未満都市』は『チャイルド★プラネット』の盗作だったと判明したんです。
『チャイルド★プラネット』作者の竹熊健太郎さんが『ぼくらの勇気未満都市』において釈然としない事「あれは公認ではなく盗作だった」「一銭ももらっていない」
ぼくはそんな騒動で漫画の存在を知り、あらすじを見てみると面白そうだったので購入したんです。
たしか、その時は電子書籍化されておらず、中古もなく、埋もれていた作品だったと思います。その後すぐ竹熊さんの電脳マヴォで電子書籍版がアップされたんですよね。当時も1巻無料でした。
皮肉にも、パクリ騒動でこの名作が再評価されたともいえるのかも
3.11、原発事故、日常と地続き感
『チャイルド★プラネット』は未知のウイルスの存在以外はリアルに描かれています。そんな「大人だけ死ぬウイルス」が蔓延したら世界はどうなるのか?の想像力の物語なんです。
1996年の作品なので、1995年の地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災の影響を受けている物語だと思います。
それは20年以上たった今でも鮮烈に伝わってくるものです。3.11東日本大震災、そして福島第一原発事故を経験しているので、、
今のコロナウイルスもそうですが、原発事故の放射線の「見えない恐怖」が、2011年の記憶とリンクして切迫して伝わってきます。
作中ではパンデミック後、米軍がいち早く動いて、アメリカ国籍を持つ人間を保護するシーンがありますが、3.11の時のことを思い出しました。まだ原発がメルトダウンしているかしていないか報道されていない時、「アメリカ軍の家族が日本から引き揚げたら終わりだ」とか、ネットには様々な情報が流れました。
あのときの、目に見えないものへの恐怖を思い出します。
どうしても思い出してしまうあの事故
現代にはできない?でもリメイク期待
現代とものすごくリンクする一方で、やはり20年以上前の作品なので絵柄、内容ともに時代性は感じます。この話はネットが当たり前に普及した現代では難しい話だと思います。
『チャイルド★プラネット』はまだネットが「パソコン通信」とも呼ばれていた時代です。まだネットは一般には普及していなくて、いわゆるオタクと呼ばれる人たちなどごく一部が利用していた時代です。
インターネットがない時代なので、外界との遮断が容易なんですね。
今なら事件があったと同時に動画が撮影されネットにアップされ拡散されていきますが、当時はそんなことはない。なので隔離された恐怖と切迫感がより強く感じられます。
作中の隔離された子供たちにとっては、外の世界への情報発信が命運を分けることになりますが、今ならそんなの簡単じゃん、って思ってしまいます。
ぼくはネットのない時代も過ごしてきたから、あの時代のネットの空気感(顔も知らない誰かとチャットなんてファンタジー感がありました)も伝わるけど、もしかすると、今のスマホ世代には伝わらないのかもしれません。
ただ、現代ならパンデミック時のパニック映像が世界に拡散され、情報があるせいで世界が恐怖に包まれることになるので、それはそれでフィクションとしては読んで見たい気がします。
「大人だけ死ぬウイルス」がネットがインフラ化した現代に蔓延したらどうなるのか?なんてリメイクを読んでみたいです。
ネットフリックスでドラマ化してくれ!!
ってか海外ドラマで似たようなのありそう
究極の選択
『チャイルド★プラネット』では、子供たちを見捨てるか、救うか、究極の問題が描かれています。
子供たちを守れば世界にウイルスが蔓延し大人たちが感染する。つまり、人類が死滅する?わけですよ。
そりゃあ隔離せよってなりますが、子供たち視点で描かれる物語だし、どうしても子供たちに感情移入してしまいます。
これは善と悪っていう簡単な問題じゃなくて究極の選択なんですよね。人類のために、と思っても、子供たちの中に自分の子供がいたら?
究極の選択をみんな迫られており、そこで選択せざるを得ない状況の積み重ねで物語が進んでいきます。
究極の選択、トロッコ問題を彷彿とさせます。
暴走したトロッコの線路の先は2股に分かれている、そのまま進めば5人死ぬ、もう一方の線路へ進めば1人死ぬ、自分にはその2股の選択権がある、という。
トロッコ問題 – Wikipedia
読んでいても辛いです。
トロッコ問題はえげつない、、
【ネタバレあり】エンディングの感想
ここからはネタバレありです。なので『チャイルド★プラネット』を最後まで読んだ方だけお読みください。
ぼくはエンディングにちょっと納得がいかなかったんですよね。「究の父さん、降り立つなよ!」って。なんであそこでヘリコプターで降り立って、究と抱き合って、みんなは拍手してんだよって思ったんですよ。即発症するじゃんって。
あそこは「この事実は世界に伝わった!必ず助けるからな!」って言って飛び去らないと、、
感情的に降り立ってしまうのはわからないでもないけど、子供たちが感動した感じで拍手している様はどうにも違和感がありました。今まで発症して死ぬ大人、大人=死を散々見てきたのに。
ラストは詰め込んだ感じでしたね。残りのページこれだけでこの展開?どうなる?っていう興奮もありましたけど。
なんというか、エンドは「ドラゴンヘッドエンドだなあ、、」って真っ先に思いました。
調べてみるとドラゴンヘッドと同時期の漫画なんですね。あれは当時読んでいて、ラストに面食らったというか「こんなんで終わっちゃうんかい、でもそうなるわな」みたいなエンドなんですけど、チャイルドプラネットもそれを思い出すエンドで、、
究が「子供のためなら、たとえ世界を敵に回しても戦う」って結論も出していて、それは当然、横浦を見捨てようとした政府の方針とも全く同じなんですよね。人類の矛盾というか、まあそりゃそうだわなっていう。
まあ、一見バッドエンドなんですよね。
ただ一応希望も残されはいます。爆破されたウイルスの研究室、博士は死んだけどウイルスのワクチン情報の入ったフロッピーディスクだけは壊れていない描写があります。
あれは伏線だと思っていたんですが、最後まで触れられなかったですね。この、どっちつかずのエンドのために残された希望なんだと思います。
さいごに
というわけで『チャイルド★プラネット』の感想でした。全7巻で一気に駆け抜ける素晴らしい漫画だと思いました。
究極の問題を書いているだけにラストは平凡なものになってしまった印象もありますが、十分に名作だと思います。
「大人だけ発症するウイルス」っていう設定が本当に見事です。このプロットで現代版としてネットフリックスとかでドラマ化してくれないかなーって思います。
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