『教団X』中村文則/宇宙、宗教、戦争、人間。教祖の奇妙な話が面白い

中村文則さんの『教団X』という本を読みました。

分厚い本です。立っちゃう系の本です。

以前アメトーークの読書大好き芸人で紹介されていて知って、興味を持っていた本で。

分厚いし内容も重そうなので読むのをためらっていたんですが、読み始めるとスイスイ読める面白い内容でした。

『教団X』中村文則

『教団X』は宗教の話です。宗教にすがる人や宗教の教祖を通して、社会の成り立ちや仕組みを描き、そこでもがく人々を描いています。

あらすじ

突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。著者の最長にして最高傑作。

『教団X』中村文則 (集英社文庫)

内容重そう、、600ページ近くあるし、、

宇宙、宗教、戦争、人間。教祖の奇妙な話

物語はあらすじの通り進んでいきます。その要所要所で「教祖の奇妙な話」というエピソードが差し込まれて。これが面白いんですよね。

教祖、と言ってもちょっと違っていて、その人に魅力があったから人が集まってきたって感じのおじいさんの話です。宇宙、宗教、戦争、人間などの興味深い話があります。

人はどこから来てどこへ行くのか?宇宙はどうなっているのか?この世界の仕組みは?などという答えの見えない哲学的な話を柔らかく噛み砕いて話しているんですね。

この教祖は戦争体験者なのですが、ものすごくリアリティのある戦争体験の話があったりして。その話は特に興味深かったです。

ぼくのようなアホでも楽しめる世界の話、とでも言うんですかね、最後に膨大な参考文献が載っていますが、それらの本の内容を噛み砕いて説明してくれているような感じなんです。まあその本読んでないからわからないけど。

タイトルだけでも興味が湧く、でも難しそうで読む気力ない、みたいな本が並んでいます。

『教団X』の参考文献欄にあった面白そうな本
  • 『脳はなぜ「心」を作ったのか——「私」の謎を解く受動意識仮説』
  • 『〈意識〉とはなんだろうか』
  • 『眠れなくなる宇宙のはなし』
  • 『宇宙は本当にひとつなのか』
  • 『量子力学の哲学』
  • 『国家神道と日本人』
  • 『世界の半分が飢えるのはなぜ?——ジグレール教授が我が子に語る飢餓の真実』

4、50冊くらいはあるでしょうか、膨大な資料をもとに教団Xは作られているんですね。

もしかしたら、哲学書の入門みたいなふうに見ても面白いんじゃないかと思います。

こういう話をして信者を掴むのがいかにも宗教だなって感じもしたし、それひっくるめて面白い

ネットの右傾化、操る存在

カルト宗教に染まる人って何か答えを求めている人、何かにすがって安心したい人ですよね。もともと、社会で満たされない思いがあって、鬱屈したものがあって。

そんな人の心の弱さにつけ込むのがカルト宗教なわけですが、世界三大宗教だって歴史が長いだけで始まりは同じだったんだろうなって、改めて思わされました。今より生活が苦しい時代に生まれたものですし、大きくなるのも早かったんじゃないかと、で、ただ長く続いただけなんだろうなって思います。

これは他の本で読んだことなんですが、南無阿弥陀仏さえ唱えれば救われるとか、祈れば救われるとか、そういう風に、救われるためのルールを簡単にした宗教ほど大きくなるんですよね。

これと似たようなものがネットの右傾化で。いわゆるネトウヨです。何も誇れるもののない自分にある”日本人”って属性。ここを拠り所としているために過激になっていくのかなと。

『教団X』では、そんなネトウヨを操って国を裏から動かす存在も出てきたりして実に興味深いです。

走り出したら、走り出した理由を忘れて走ることが目的になってしまう、人間ってそういうとこある。それを利用されると怖い

裏切り者のユダの話

キリスト教のユダの話があって面白かったんですよね。

ユダってキリストを裏切ったことで有名ですよね。でも真実は違うんじゃないか?って視点があるらしいんです。

で、その考えだと確かにそうだなって思わされるんですね。すべては伝聞なので真実はわからない。簡単に信じるのはおかしいよなって、なんで今まで普通にユダ=裏切り者として理解していたんだろうって思いました。

理解するために物事をわかりやすくすることは大切です。一方でわかりやすいことは楽なので、わかりやすいものばかり求めてしまう自分がいたりします。

それに、最初に知ったことを信じてしまう傾向があります。人が発信するものだからどうしても偏りや間違いはある、とわかっていても一番最初に得た情報を信用しやすいし、そこありきで考えたりしてしまう。

世の中はもっと複雑だから、そんな簡単に理解できるものでもないはずなのに理解した気になっていたり。

そんな複雑なものを複雑なままに伝えていて、それはやっぱりわかりずらかったりもするんだけど、でも伝わってくるものがありました。

世の中に少年漫画のような勧善懲悪はあり得ないですよね。そうわかっていて悪に同情の余地を残し、感動させるストーリーはごまんとあります。でもそれよりもさらに複雑に絡まり合っているのが現実なんだよなと。

そもそも善と悪の二項対立ではないし、善がまっすぐ善でもないし、悪もまっすぐに悪ではない、そういう複雑なものが人間であり、複雑な人間が作るからより複雑なのが社会である。そういうことを考えました。

世の中は複雑だって、わかっていても忘れちゃう時がある答えが出たら終わり!ってなっちゃう

小説だからこそ描けるリアリティ

というわけで『教団X』の感想でした。

考え方の話ばかり書いてしまいましたが、物語の展開も面白いです。なんだろう、映画では描けない、小説だからこそ描けるリアリティを感じました。

その、派手すぎないというか。映画はラストとかドラマチックなアクション性とか求められちゃうと思うので、、
そうじゃないのが物語としてつまらないって意見もあるのかもしれないけど、ぼくは好きでした。

感想がまとまっていないですが、、またすぐ読み返したいなって思いました。めちゃくちゃ面白い小説でした。

複雑なものを複雑なままで理解する、考えることが大事だなと教えてくれました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました