今やアニメ化もされている大人気の漫画『進撃の巨人』が、一度は出版社から断られていたというのは有名な話で、知っている人も多いのではないかと思います。
作者の諌山創さんは19歳の時、読み切り作品として描いた『進撃の巨人』の原稿をジャンプに持ち込みました。しかし、少年漫画の王道であるジャンプの編集部からは「ジャンプらしくない」ということで断られてしまいます。
チャンピオンもダメで、最後に訪れたマガジンで現在の担当編集者と出会い、無事に世に出ることになったのです。
さてその持ち込み原稿は一体どんなものなのか?
少年漫画で常にトップを走ってきたジャンプ編集部が見抜けなかった才能です。一体どんな読み切り作品だったのでしょうか?
なんとこれが今は無料で読めちゃうんです。マガジンデビューというサイトに当時の持ち込み原稿である『進撃の巨人』の読み切りが掲載されています。
>>マガジンデビュー 作者と編集者の距離が一番近い漫画投稿サイト
これが荒削りですが面白い作品でした。まさに『進撃の巨人』の原型、プロトタイプという感じで、今の『進撃の巨人』に通じる部分が見えてきます。
持ち込み原稿は現在の『進撃の巨人』のダイジェスト
持ち込み原稿の『進撃の巨人』と、現在の『進撃の巨人』の世界観はほぼ一緒です。
巨人の脅威にさらされる人類は壁を作り、その中だけで暮らしている。調査兵団のような組織があり、巨人に対抗する唯一の手段ではあるけれど、未だ勝利したことがないと。
持ち込み原稿は読み切りで少ないページ数だからか、最初にその世界観がしっかりと説明されています。展開も早く、進撃の巨人のダイジェストのような感じがします。ぎゅっと詰め込まれていますね。
持ち込み原稿に出てくる巨人は、人類が自然保護のために生み出した存在です。
宗教科学団体が自然保護のために「人類駆逐計画」を打ち出し、その計画実行のために巨人を生み出したようです。自然を守るために人口を減らしたい。そのための手段が巨人の力というわけです。
つまり、人類が巨人の力を利用しているんですね。巨人の力を人間がうまく使うという点では、現在の『進撃の巨人』も似たような展開になっています。
そして、主人公が巨人の力を持っているという点。ここは完全に一緒ですね。この時からしっかりとした構想があったのでしょう。進撃の巨人も敵の巨人と比べてそれほど変化がないので、この頃からデザインは固まっていたようです。
持ち込み原稿の『進撃の巨人』では、連載漫画版で徐々に語られていった謎が駆け足で出てくるので、情報量が多い気がしますね。
ジャンプが見抜けなかった才能
それにしてもやっぱり最初に感じるのが「絵がヘタ」というところ。
まあ絵がかけないぼくがいうのもあれですが、世に出ている漫画と比べてみるとやっぱり画力の低さが目につきます。素人のウェブ漫画レベルという感じです。
ジャンプ編集部がこの漫画を持ち込まれて連載を断ったのも正直わかるような気がします。きっと星の数ほど漫画が持ち込まれていてそれを読んでいるのだろうし、なかなかこの画力では難しいかなと思うのはわかりますね。
だた、マガジンはこの才能を見抜いた。もう単純にすごいですね。
編集者の力も影響している?
マガジンがこの才能を見つけたこともさることながら、この漫画をより面白くしたのも編集の力が結構あったんじゃないかなあと、持ち込み版を読んでみて思いました。
というのも、持ち込み原稿と漫画連載版とでは、ストーリーや見せ方が若干変わっているからです。
連載漫画版の『進撃の巨人』の方が原型の持ち込み原稿よりも物語がより洗練されている感じがします。「この世界はこうなっていて」という情報の提示の仕方も全然違います。
連載漫画版ではゆっくりゆっくり情報を出していって物語にどんどん興味を持つように誘導しているわけです。
この辺の演出というのか、漫画の表現のテクニックだったりストーリーをどこまで小出しにして行くかだったりのバランス感覚は、漫画の編集者の力によるものなんじゃないかなあと思いました。
持ち込み原稿はダイジェストと先に書いた通り、ページ数が少ないからこそ描きたいものを凝縮して書いてある良さがありますが、連載漫画版はページに余裕があるからこそ一つ一つを丁寧にして迫力を持たせている良さがあります。
で、それは持ち込み原稿を薄く引き伸ばしたわけじゃないんですよね。物語のドキドキハラハラ感を常に持続させています。
「次が早く読みたい!」という気持ちが全然途切れないんですよね。
作者の諌山さんが一人で作り上げた持ち込み原稿から、単純に画力が向上したものが連載漫画版の『進撃の巨人』だったなら編集の力は関係なく諌山さん一人の力だと思います。
しかし、ストーリーが違っていたり演出が違っているところが結構あったので、編集の力も影響しているのかな?と、そんな風に思いました。
『進撃の巨人』を読んだことがない人にもおすすめ
というわけで、『進撃の巨人』の持ち込み原稿版が今無料で読めるわけですが、もしかしたら期間限定だったりするのかもしれないので、是非この機会に読むことをお勧めします。
>>マガジンデビュー 作者と編集者の距離が一番近い漫画投稿サイト
進撃の巨人を読んだことがない人でも普通に楽しめる漫画だと思いますし、これを読んだら連載版も読みたくなるはずです。
「進撃の巨人面白いって聞くけど、いまさら入りづらい」と思っている人なんかにはうってつけです。なんせ無料でウェブで読めるんで。
それにしても、この持ち込み原稿の段階で諌山さんの才能を見つけたマガジンはすごいの一言ですね。才能を見つけたし、才能を伸ばしたんじゃないかと思います。
今の『進撃の巨人』はめちゃくちゃ面白いので、マガジンと諌山さんがよく出会ってくれたなーと思いますね。
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