映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』を観ました。インパクトがあるのでタイトルだけでも1度目にしたら忘れない映画ですね。
ぼくは奥田民生はそれなりに聴いてきたミュージシャンなので興味があって今回ようやく観てみました。
『奥田民生になりたボーイと出会う男すべて狂わせるガール』はラブコメディ
奥田民生になりたボーイと出会う男すべて狂わせるガール(タイトル長え)は渋谷直角のサブカル漫画の映画化したもの。
2017年の映画で、全編にわたって奥田民生の楽曲が使われるラブコメディです。
あらすじ
奥田民生を崇拝する33歳、コーロキ。
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おしゃれライフスタイル雑誌編集部に異動になったコーロキは、慣れない高度な会話に四苦八苦しながらも次第に、
おしゃれピープルに馴染み奥田民生みたいな編集者になると決意する!
そんな時、仕事で出会ったファッションプレスの美女天海あかりにひとめぼれ。
その出会いがコーロキにとって地獄の始まりとなるのだった…。
あかりに釣り合う男になろうと仕事に力を入れ、嫌われないようにデートにも必死になるが常に空回り。
あかりの自由奔放な言動にいつも振り回され、いつしか身も心もズタボロに…。
コーロキはいつになったら奥田民生みたいな「力まないカッコいい大人」になれるのか! ?
そしてもがく先にあかりとの未来はあるのか! ?
この映画を見た後にあらすじを読んだんですが、タイトルがこうでなかったらぼくは見なかった映画です。奥田民生、ただそれだけで見たと言えます。
俳優コントな空気感
見始めて、「ああこれ失敗したな〜」なんて思いました。最初からラブコメとして観ていればよかったのかも。最初はどう観て良いかわかりませんでした。
コメディ要素はあるんだけど笑う要素はなくて、俳優が皆キャラ上乗せしてコミカルに演じていて、俳優がやるコントって感じで。そんなに笑いを狙っているってわけじゃないんですよね。
妻夫木聡演じる主人公コーロキが心の声があったりコミカルな感じなので、どうせなら周りも、もう少しコメディに寄ったほうがよかったかなと思ったりしました。
序盤にリリー・フランキーとか天海祐希がコメディ要素として出てきて、それは良かったんですが、結局ちょい役だけだったので「面白要素は最初のこれだけかい!」って感じで、真剣に物語を語っていくのか単にコメディなのか、序盤はどう観ていいかわからない感じになりました。
でも、だんだん慣れてきます。これに耐えればラストは結構面白いオチに連れて行ってくれます。
そう言えば新井浩史が主要な役として出ていたので絶対にテレビ放送はないんでしょうね。Amazonプライムでは見れます。
奥田民生の生き方
普通のアーティストと違って、奥田民生って楽曲だけじゃなくて生き方も尊敬されるというか「あんな風に生きられたら良いなあ」って羨ましがられるような人ですよね。
なんでそうなるのかって言うとやっぱりあのひょうひょうとした態度でしょう。
まだ音楽番組がテレビのゴールデンタイムでやっていて視聴率もとるしCDも売れまくった90年代。テレビに出るアーティストは華やかでギラギラしている中で、奥田民生のその辺の普通の兄ちゃん感は逆に異質で目立っていました。
奥田民生は華やかなテレビの世界において「普通でも良いんだ」と思わせてくれた気がします。
気負わない感じで名曲を連発して売れまくる、さぞかし良い人生だろうなって見えますね。そりゃ憧れる。男はみんな憧れるんじゃないかなって思うくらいです。
<ネタバレあり>狂わせガールが示した奥田民生的生き方の答え
俳優コントだしベッドシーンばかりだしなんとなくオチも読めるし、あんまり面白くない映画かなーと思いつつ見ていたんですが、ラストは良かったです。
というのも、ちゃんと主人公の奥田民生になりたいボーイの人生の答えのようなものを描いていたんですよね。これが若干のネタバレになるので気なされる方はこれ以降は読まないでください。
この映画はまあタイトルの通り、民生ボーイが狂わせガールに狂わされるコメディです。そのままかよ!って思いつつ観ていると、その狂わされた先が面白くて。
民生ボーイは狂わせガールの生き方に学んで終わるんです。ここが皮肉が効いてて面白いなと。
民生ボーイの生き方は「力まないかっこいい大人」を夢見ているもの。まあ青臭いというか表層の部分しか見ていない。
これに対して狂わせガールの生き方は「相手の望む自分を演じる、印象操作的な生き方」なんですよね。この生き方で狂わせガールは周囲の男を手玉にとりつつ取っ替え引っ替えうまく世の中を渡っていきます。
コーロキは狂わせガールとの経験の末、狂わせガールの生き方から「自分を変えるのではなく、相手が受ける印象を変えれば良い」と学びます。
そして数年後、周囲から「奥田民生のように見られる人」になるんです。つまり、狂わせガールの世渡りを真似したら奥田民生のようになれたんですよ。。
あれ?ってことは奥田民生ってく狂わせガールだったの?印象操作の人だったの?皮肉きつっ!って思いますよね。
でもまあ民生って同じようなスタンスでパフィーを売った人だし、セルフブランディングの人ってイメージもあるので案外狂わせガールの要素もあるのかなとも思います。狙っている部分がないわけない。
それをわかっていなくて表面的な奥田民生のカッコよさだけを真似しようとした浅はかな人間が民生ボーイだったんだろうなと思いました。
民生ボーイは民生のようになれたけど、でもラストは泣いています。その涙の答えは虚しさかなんなのかはわかりません。
奥田民生=狂わせガール?
奥田民生も狂わせガールだったんですかね。ぼくはこの映画からそう感じました。奥田民生ファンを狂わせていたのかもしれません。
それでいてぼくは奥田民生が好きだったし生き方も羨ましかったので奥田民生なりたいボーイだったかもしれない。
コーロキのように奥田民生の「力まないかっこいい大人」っていう表層の部分しか見れていなかった。でも狂わせガールに出会わなかったし、本質はわかっていないから「相手の印象を変えれば良い」なんて世渡り上手な答えは見つけられない人生でした。
いや、まあ、それがわかっているってことと、それが実際にやれるってことは別の問題ですけどね。映画のコーロキはそれがわかってそれができたから周囲から奥田民生っぽいと思われるような存在になれた、でも魂は満たされない、ぼくにはそんなエンドに思えました。
狂わせガールは印象操作というよりは嘘をついて周囲を狂わせていたので、コーロキが狂わせガールの生き方を真似て奥田民生のようになれたからといって「狂わせガール=奥田民生」ってわけじゃないですが、狂わせガールの生き方から印象とか表層に人間は踊らされると身をもって知り、ふっ切れて変わったコーロキの姿が人間社会の悲哀を描いているようでなんとも言えない気持ちになりました。
さいごに、ネットでは酷評だったけど面白かった
というわけでまとまらないですが感想を書いてきました。ここまで書いた後でAmazonプライムのレビューを見て観たんですが結構酷評で。星2なんですよね。
まあ確かに奥田民生の曲がこれでもかって使われて、まるで何曲以上使わないといけないってノルマがあるのか?って思ってしまうくらいトゥーマッチだったり、ベッドシーンが謎に多かったり、そもそも狂わせガールに狂わされる男に共感できなかったり。
悪く言えばキリがないですが、ぼくはラストが好きだったので見てよかったと思いました。まったく重くはないし、でもラストの人間の変化は興味深いので、おすすめな映画です。
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